r の母音化(r-Vokalisieirung)
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語末・音節末の -er, -r はふつう母音化し,[ɐ] と発音される。 |
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[ɐ] |
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Bäcker ['bɛkɐ ベッカー] パン屋 Uhr [uːɐ ウーア] 時計 |
● [ɐ] はいわゆる曖昧母音の一つで, [ə] よりもやや口を開いた [a] 寄りの音。軽く「ア」と発音する。辞書によっては,-er
[ər], -r [r] の母音化であることを示すために,イタリックで [ər], [r] と表記することもある。
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子音の r は,[ʁ], [ʀ] など,いくつかの発音のバリエーションがあるが,辞書などでは簡略化して [r] と表記されるのがふつう。以下では,[ʁ]
を用いている。 |
● 母音化の典型例:
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-er |
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Mutter ['mʊtɐ ムッター] 母 |
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-er+子音 |
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mütterlich ['mʏtɐlɪç ミュッタリヒ] 母のような |
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ändern ['ɛndɐn エンダーン] 変える |
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長母音+r |
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Tür [tyːɐ テューア] ドア |
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長母音+r+子音 |
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Lehrling ['leːɐlɪŋ レーアリング] 見習い |
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(du) fährst [fɛːɐst フェーアスト] 乗り物で行く |
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母音が続くと子音として発音される(母音化しない): |
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Änderung ['ɛndəʁʊŋ エンデルング] 変化 Türen ['tyːʁən テューレン] ドア(複数) |
● 揺れがみられる例(ただし多くの場合母音化する):
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長母音 a+r |
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Haar [haːʁ ハール / haːɐ ハーア] 髪の毛 |
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短母音+r |
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Form [fɔʁm フォルム / fɔɐm フォアム] 形 |
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次は,初級段階で出てくるため学習者が混乱しやすい例(教えられる発音と実際のネイティブの発音が異なることがある): |
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gern [gɛʁn ゲルン / gɛɐn ゲアン] 好んで dort [dɔʁt ドルト / dɔɐt ドアト] あそこに
Karte ['kaʁtə カルテ / 'kaɐtə カアテ] カード arbeiten ['aʁbaɪtən アルバイテン / 'aɐbaɪtən アアバイテン] 働く
(er) wird [vɪʁt ヴィルト / vɪɐt ヴィアト] ~になる |
● 接頭辞 er-, ver-, zer-:
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er- |
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[ɛɐ] |
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Ergebnis [ɛɐ'geːpnɪs エアゲープニス] 結果 |
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ver- |
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[fɛɐ] |
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Verkehr [fɛɐ'keːɐ フェアケーア] 交通 |
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zer- |
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[tsɛɐ] |
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Zerstörung [tsɛɐ'ʃtøːrʊŋ ツェアシュテールング] 破壊 |
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接頭辞 er-, ver-, zer- はアクセントを持たないため,実際のネイティブの発音では,弱化することが多い: |
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erfinden [ɛɐ'findən エアフィンデン] --> [ɐ'findn アフィンド(ゥ)ン] 発明する
verboten [fɛɐ'boːtən フェアボーテン] --> [fɛ'boːtn フェボート(ゥ)ン] 禁止された
zerstört [tsɛɐ'ʃtøːɐt ツェアシュテーアト] --> [tsɛ'ʃtøːɐt ツェシュテーアト] 破壊された |
● 母音化の進行(通常,r のあとに母音が続くと母音化しないとされるが):
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r+i |
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Ferien ['feːʁiən フェーリエン / 'feːɐiən フェーアイエン] 休暇 |
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r+en |
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passieren [pa'siːʁən パスィーレン / pa'siːɐn パスィーアン] 起こる |
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hören ['høːʁən ヘーレン / 'høːɐn ヘーアン] 聞く |
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以上の説明は標準ドイツ語に該当するもので,方言ではさまざまなバリエーションがある。例えば,スイス,オーストリア西部,ドイツ南部では,er-,
ver-, zer- のあとに母音が続くと,r といっしょに発音され,音節の境界がずれるということが起こる(次の [r] は「巻き舌の r」を示す):
erinnern [ɛɐ'ɪnɐn エアインナーン] 思い出す --> ((方言)) [ɛ'rɪnɐn エリンナーン]
Verein [fɛɐ'aɪn フェアアイン] クラブ --> ((方言)) [vɛ'raɪn フェライン] |
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とりわけスイスでは,r の母音化は起こらず,「巻き舌の r」が用いられるのがふつう。
erfinden ((スイス)) [ɛr'findən エルフィンデン] 発明する |
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(注:発音表記では ‿ や ̯ のような補助記号は使用していません。アクセントは音節前の
' で示しています。) |
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