やって来ました，ハンブルク。朝のアルスター湖。 ハンブルクのサッカークラブと言えば，まずはハンブルガーSVが思い浮かぶ。一度も2部降格を経験したことのないブンデスリーガの「恐竜」だ（注：当時）。 しかしながら，この町にはもう一つ重要なクラブがある。ザンクト・パウリ。ハンブルクの港湾地区の名を冠するそのクラブは，「リーガの海賊」という異名を持つ。

小規模のクラブながらビッグクラブに対しても勇敢に戦うことを象徴し，ファングッズにはどくろ（Totenkopf）のモチーフが用いられている。 ホームスタジアムは有名な歓楽街レーパーバーンの近くにあり，特筆すべき点は，伝統的に政治的関心の高いファン層を持つこと。今やどこでも常識だが，早い時期からスタジアム内での差別的な発言を禁止するなどしている。

さて，試合前にエルベ川沿いを散策しようと，ランドゥングスブリュッケン駅に降り立つと，サポーターによるデモに遭遇。いきなりザンクト・パウリの空気感！

では徒歩でスタジアムへ。少年の背中にはSt. Pauliの文字。

ちなみに町中では，ハンブルクのお祭り，ハンブルガー・ドーム開催中。スタジアムはこの向こう。おもしろすぎる，ザンクト・パウリ。

やって来ました，ミラーントーア・シュターディオン。収容人員3万人足らず。

きっといつかはと思っていたスタジアム。 宮市亮の移籍が決まったことで，この機会にと思いチケットを取ったのだけれど，残念ながら宮市は開幕前に膝じん帯断裂の悲しい大けが。とにかく今は順調な回復を，そして来季での巻き返しを祈るばかり。

どくろのうしろに見えるのはハンブルガー・ドームの観覧車。思いっきり町中のスタジアム。

ホームサポーターの前を横切り選手入場。チームカラーは茶色。この辺りも個性的。

今日の対戦相手はグロイター・フュルト。バイエルン州フランケン地方の古豪だ。数は少ないながらも，スタジアムの一角をチームカラーの緑が占める。

ブンデスリーガ2部2015/2016年シーズン第3節，ザンクト・パウリ対グロイター・フュルト。8月16日（日），13:30キックオフ。

コーナーフラッグもカッコいい。

とにかく走る。走り回る。それをファンが後押しする。なるほど，これがザンクト・パウリか。

ゴールも多く決まり，見ていておもしろい試合に。電光掲示板に表示される "TOOR!" の文字も前衛的。

ハーフタイム中にも政治的な（？）スローガンが掲げられた横断幕がちらほら。例えば，「違法な人間などいない」（KEIN MENSCH IST ILLEGAL）などの文字が見える。そんなスタジアムがほかにあるだろうか。

試合終了。3対2でザンクト・パウリの勝利。勝ったというのに，その場に倒れ込む選手が複数。とにかく最後までよく走った。 掲示板には，「心は一つ，気持ちは一つ」（EIN HERZ UND EINE SEELE）の文字。

驚きはまだ終わらなかった。ファンが帰らない！  試合終了後，これ程長い時間ファンが残るスタジアムを僕はほかに知らない。選手たちも時間をかけてフィールドを回る。

特別なサッカー文化がここにあった。世界は広い。

アルスター湖の湖畔を歩き，再びハンブルク中央駅方面へ戻る。

余談。夕方，駅へ出かけたら，フュルトの選手たちが軽食を取りながら帰りの電車を待っていた。 ハンブルクからフランケン（バイエルン州）は遠い。負けた試合のあとはさらに長い旅路になるのだろう……。